あたりまえの朝を願う夜

久しぶりに名古屋へ出かけた。
栄の天狼院書店でカフェラテを飲みながら本を読む。
本を開く手の向こうで、街のざわめきがやわらかく遠のいていく。
ああ、こういう時間が好きだなと思った。

そのあと大須へ。
夫と友人と合流して、
たこ焼きをつまみながらアルコールを少し。
くだらない話をして笑って、
なんでもない時間を共有できることが、
ちょっと嬉しかった。

けれど、帰りの電車で、夫が突然倒れた。
眠っているのかと思ったけれど、
呼んでも返事がなく、
エスカレーターでも再び倒れてしまった。
その瞬間、世界の音が一瞬で消えた気がした。

救急車を呼んでもらって、
周りの人の声が聞こえるのに、
自分の心だけが遠くにあった。
けれど、少しずつ顔色が戻って、
意識も戻ってきてくれて、
そのときようやく、息ができた気がした。

今、夫はリビングで静かに眠っている。
呼吸の音を確かめながら、
まだしばらくは寝室に行く気になれない。
友人に迷惑をかけてしまったことも、
自分が何もできなかったことも、
胸の奥に重たく残っている。

今日の目標は「寝ること」だけ。
それでも、こうして呼吸の音が聞こえる夜に
小さな安心を感じている。
明日、何事もなく朝を迎えられますように。
静かな祈りだけが、今の私を支えている。

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