シリーズ:『もう遅い』を手放す心理トレーニング|第3回
「始めるのがしんどい」、「続かないのが怖い」。
そんなときの目標は、笑っちゃうくらい小さく設計するといいのよ。
大きな決意より、「15分・1指標・期限」。
今日は、意志じゃなくて、設計で進むためのマイクロゴールを一緒につくっていきましょう。
なぜマイクロゴールが効くの?“小さすぎる”が動きを生む

私たちの脳は、未知の大きさに警戒してしまうの。
いきなり完璧を目指すと、心の中のブレーキが強く踏まれてしまうのよ。
逆に、小さい一歩だと、体は「それなら、まあ」って動きやすくなるの。
毎回の目標を下げてあげると、前進の回数が増えて、自己効力感が静かに育っていくわ。
行動の起点には「心理的摩擦」があるの。
タスクの曖昧さ、終わりの見えなさ、評価される不安、他人の基準との比較——これらが重なるほど、踏み出すコストは跳ね上がってしまうってことね。
マイクロゴールは、この心理的摩擦の要素を1つずつ外す仕組みなの。
小さい・終わりが明確・自己完結・評価が不要。
この4つが揃うと、人は自然に動けるようになるのよ。
さらに、小さすぎる目標は自己効力を感じる回数を増やす戦略でもあるわ。
5分で終わる達成を1日3回すると、脳は「できた」って信号を何度も受け取るの。
これが自己効力感の栄養になるのよ。
長距離走を週1回より、散歩を毎日10分のほうが心が軽くなるのは、この仕組みが働くからなのね。
ちょっとミニ理論:行動科学で言うと、マイクロゴールは意思よりも設計(choice architecture)を重視する介入なの。
抵抗の低い入口、明確な出口、小さなご褒美がそろえば、やる気は後からついてくる。
「やる気が出たら始める」んじゃなくて「始めたらやる気が出る」に置き換えるのがポイントよ。
セルフチェック(当てはまるものに✓):
✓が多いほど、マイクロゴールとの相性が良いのよ。
まずは笑っちゃうくらい小さくからで十分!
3要素の設計図:15分・1指標・期限
- 時間は15分。
短いほど良いんじゃなくて、短いから始められる。 - 指標は1つだけ。
ページ数でも分数でも歩数でもいいんだけど、終わりが自分で分かるものにしてね。 - 期限は今日か明日。
先延ばしの余白を小さくして、今の自分ができる約束に整えるの。
3要素のポイント:
- 15分:準備を入れても着手できる長さ。取りかかる前に迷わない。
- 1指標:数・分・行・回など「終わり」が数えられるもの。
- 期限:今日か明日。最短で回収できる約束にして、翌々日に引きずらない。
よくあるNG例と置き換え:
- NG「英語をがんばる」→ OK「単語10語を音読3回(15分・今日)」
- NG「ポートフォリオを作る」→ OK「作品一覧の見出しを3つ書く(15分・今夜)」
- NG「運動する」→ OK「スクワット15回×2(15分・寝る前)」
テンプレート文(コピペ用):
「いつ」までに、「時間」で、「指標」をする
例:「今日の21時までに、15分で、英単語10語を音読する」
具体例:学び直し・転職準備・健康づくり

学び直し:
英単語帳を開いて10語だけ復習。
指標は「10語」、時間は「15分」、期限は「今日の夜まで」。
転職準備:
職務要約の冒頭を3行だけ書く。
指標は「3行」、時間は「15分」、期限は「明日の午前」。
健康づくり:
スクワットを15回を2セット。
指標は「30回」、時間は「15分」、期限は「寝る前」。
どれもかわいいくらい小さくて大丈夫です。
他にも:
- 読書:目次を声に出して読む(15分・今日)/1章の見出しだけ拾う(明日の午前)
- 家事:キッチンタイマー15分で“見えるところだけ”片づける(13時)
- 貯金:家計アプリで「固定費カテゴリ」を一つだけ見直す(明日)
- クリエイティブ:写真を3枚だけ現像(今日)/1段落だけ推敲(今日の午後)
- 人間関係:メッセージを1通だけ下書き(12時まで)/お礼を一行だけ送る(今日)
マイクロゴール判定の3問:
- 読んだ瞬間に終わりが分かる?
- 道具はすぐ手元にある?(なければ「道具を出す」をゴールに)
- 想像したとき、笑っちゃうくらい簡単?
すべてYESなら、十分に小さいわ。
つまずきへの対処:「意味がない」の声は完璧主義のアラーム

「3行じゃ意味がない」と思ったら、それは完璧主義のアラームよ。
意味は、積み重なって後からついてくるの。
「今日は間に合わなかった」って落ち込んだ日は、期限を翌日にずらして、指標はそのままで続きから再開しましょう。
大事なのは、勢いじゃなくて再開のしやすさなのよ。
よくあるつまずきとリカバリ:
- 着手できない→ 指標を半分以下にする(3行→1行、10語→3語)
- 集中が切れる→ タイマーを5分に短縮して再開する
- 忘れてしまう→ カレンダーにリマインド+メモ欄をセット
- 自責が強まる→ ログに「今日は回復日」って書いて終了する
最低動作保証(フェイルセーフ)を決めておくのもおすすめよ。
「机に座ってカレンダーに✓をつける」でもOK!
行動の糸を切らない工夫が、次の日の再開を軽くするのよ。
今日の15分実験:一行ログで締める
- いま気になっていることを一つだけ選んで、15分・1指標・期限で小さく設計
- 終わったら、「日時/やったこと/指標/期限/気づき」を1行でメモ
たとえば「21:00、英単語、10語、今日まで、始めればすぐ終わった」。
この1行が、次の一歩の背中をそっと押してくれるわ。
実施ステップ:
- いま気になるテーマを1つ選ぶ
- 15分・1指標・期限で文にする(テンプレを使用)
- タイマーをセットして開始
- 終わったらログを一行だけ書く
ログ例:
- 07:15、職務要約 、1行、今日まで、「朝は言葉が出やすい」
- 12:40、散歩、10分、今日まで、「昼の光が効いた」
- 21:05、英単語、10語、今日まで、「始めれば3分で波に乗る」
今日の1アクション:カレンダーに15分ブロックを入れる

スマホのカレンダーに、15分のブロックをひとつ入れてみてください。
予定名は「私の実験」。
終わったら、予定のメモ欄に一行だけ感想を書きましょう。
これで設計から記録まで、ひととおり完了よ。
ヒント:
- 予定名は動詞から始める(例:書く/読む/歩く)
- 朝・昼・夜のうち、いちばん動きやすい時間にする
- 通知は5分前。音は静かに。邪魔しない優しい合図にする
- 終了後は絵文字一つだけで感想を残す(🙂/🔥/🌱など)
次回予告
第4回は「失敗の再定義——実験記録に変える」。
うまくいかなかった日を、次の一歩のためのデータに変換していきます。
ふつうの日々

