「もう若くないし」「今さら始めても…」。
つぶやきが、ため息と一緒に口をついて出る気持ち、すごくわかります。
家族の予定、仕事の責任、周りへの気遣い…。
ずっと誰かのためを優先してきたら、自分のことは最後のほうへ押しやられていって。
気がつけば、やりたいことを聞かれても答えが出てこない。
私も、長いあいだ「私が我慢すればいい」って自分に言い聞かせてきました。
気にしすぎだよ、と言われれば引き下がり、頼まれたら断れず、知らないあいだに自分の気力はすり減っていました。
ある日、「別に好かれる必要ないし」って言葉が不意に口から出て、肩の力が少し抜けたの。
それから始めた小さな実験。
うまくいかない日もあるけれど、それでも生きてる。
40代からでも、50代からでも、自分を優先することはできるの。
大それた話じゃありません。
キラキラした「成功法則」でもありません。
こたつで深呼吸しながら、今日から試せる小さなステップを、一緒に集めていきましょう。
「遅い」の正体は、たいてい“怖さ”と“癖”
「遅い」と決めているのはたいてい自分の中の声。
昭和世代に根強い「我慢は美徳」、母は家族を支えるもの、女性は空気を読むもの——
そんな教えが体に染みついていると、休みたいなんて言えない、断るのが怖い、という“癖”になります。
HSP気質の私は、人の機嫌に影響されやすく、疲れるとすぐ心がすり減ります。
だから、私は“夜逃げモード”(会わない・返さない・無理しない)を意識的に発動させて、心のシャッターを下ろす時間をつくるようにしました。
最初は罪悪感だらけ。
でも、世界はちゃんと回り続けていました。
「遅い」は、事実ではなく感情ラベルのことが多いんです。
怖さに名前をつけると、少し扱いやすくなりますよ。
- 「嫌われたらどうしよう」➡︎ 境界線を引くのが怖い
- 「続かなかったら恥ずかしい」➡︎ 期待値の設定が高すぎる
- 「家族に迷惑かも」➡︎ 役割を崩すことへの不安
感情の正体が見えると、「今すぐ全てを変える」のではなく「今日の一歩だけ」を設計しやすくなります。
罪悪感は“アラート”、真実じゃない
罪悪感はダメの証拠じゃなくて、これまでの習慣が変わるときに鳴るアラート。
ブレーキの利く車が「キーッ」って音を立てるみたいに、あなたの心が正常に動いている合図です。
鳴ったからといって引き返す必要はありません。
音量を少し絞りながら、安全に進めば大丈夫。
言い換えれば、罪悪感は「新しい選択の入口で鳴るベル」。
鳴っているあいだは、足元を見て、最小の一歩を静かに踏み出すだけで十分なんです。
今日からできる「小さな実験」
大きく変えようとしなくて大丈夫。
小さくて、すぐできることからで十分です。
「断る練習」を一文で
- 例:「今回は見送ります」「今は難しいです」
- 長い説明は不要。言ったら一度黙る。
休むことに“許可”を出す
- 30分、スマホの通知をオフにしてこたつで休む。
- 罪悪感が出てきたら「今は回復の時間」と言い直す。
自分の時間を先にカレンダーへ
- 昼寝・散歩・漫画・あんこ時間など、先にブロックする。
- 埋まっていたら「予約が入っているので難しいです」と言いやすくなる。
“やめること”を一つ決める
- 例:毎晩の完璧な片付けをやめて、明日の朝に回す。
- 空いた10分を自分のために使う。
迷ったら“夜逃げモード”
- 会わない・返さない・無理しない。
- シャッターを下ろすのは逃げではなく、メンテナンス。
感情の温度計ノート
- 0〜10で今のしんどさを数値化。「今日は6」だけ書けばOK!客観視が効果的です。
「好き」の回収リスト
- 子どもの頃好きだったことを3つ。今週どれかを5分だけやる。
小さな実験は、結果が出なくてもOK!
続けられなくてもOK!
やれた日は自分をほめ、やれない日は「そういう日もある」ってだけで終わり。
完璧を目指さないことが、一番の近道です。
1週間ミニプラン
Day1:断る一文をメモに保存(言いにくい相手のときに送る)
Day2:30分の休息ブロックをカレンダーに予約(通知オフにする)
Day3:「やめること」を一つ決めて実験(朝、食器を洗う など)
Day4:感情の温度計ノートに「今日の数値」だけ記入
Day5:「好き」の回収を5分(漫画の1話、あんこ一口 など)
Day6:夜逃げモードの合図を決める(スタンプだけ返す など)
Day7:できたことを3つ書く(小さいことでOK!呼吸した、でもOK!)
全部できなくても大丈夫。
飛ばしても、順番が入れ替わっても、また来週やれば問題なし。
続けるコツは「ハードルを1ミリにする」ことです。
よくあるつまずきと、その越え方
先に合図を決めておくと衝突が減ります。「今から30分だけ静かにするね」「今日は返事遅めになるよ」。家の中での“工事中”サインです。終わったら「ありがとう」を一言返す。取引ではなく、合図とお礼。
即答しないのが第一歩。「いったん持ち帰って明日お返事します」。保留が言えるだけで、断るか受けるかの選択肢が増えます。受ける場合も「来週の水曜以降で」と自分のカレンダーを守る。
三日坊主の良いところは「始められる人」ということ。再開ハードルを1ミリにするために、道具は出しっぱなし、メモはそのまま、チェックは「やった/やってない」だけ。続かなかった事実に意味を与えないのがコツ。
罪悪感がわいてきたら、「新しい選択の入口でベルが鳴っている」って思い出して。ベルが鳴っている間は、迷ってもOK、止まってもOK。鳴り止んだら一歩。そうやって少しずつ慣らしていきましょ。
それでも怖いときの味方にする言葉
変化の一歩は、たいてい心細い。
そんなときに私が唱える言葉を、よかったら使ってみてください。
「別に好かれる必要ないし」
「今日は休んでいい」
「今の私にできる最小の一歩で十分」
「これがわたしだもんな」
声に出すと、体が少しだけゆるみます。
言葉は小さな杖だから頼っていいのよ。
洗濯物しわしわ事件から学んだこと
ある日の夕方、力尽きて洗濯物を干し忘れ、翌朝しわしわのシャツを見て自己嫌悪まっしぐら。
「私のせいで…」と落ち込みました。
でも、そこで気づいたの。
完璧じゃない毎日を、ほどよい速度で、という自分との約束を、私はまた忘れていたって。
その日から“しわは人生のテクスチャ”と名付け、アイロンをかけない日をつくりました。
空いた15分でこたつに潜り、あんこを一口。
たったそれだけで、その日の私は少し優しくなれました。
欠けているところを、暮らしの愛嬌にする。
これも自分優先の一つの形です。
「今さら」じゃなくて、「今から」
自分を優先することは、誰かを見捨てることではありません。
自分の体力と機嫌を自分で守ると、結果的にまわりにも優しくなれます。
遅いなんてことは、どこにもない。
スタートはいつだって「今から」。
この場所では、説教はしません。
キラキラした正論も言いません。
トホホな出来事を少しのユーモアでクスッに変えながら、一緒に「これでいい」と思える毎日を育てていけたら嬉しいです。
よかったら、あなたの「小さな実験」も教えてください。
真似したいアイデアは、きっと誰かの呼吸を少し楽にしてくれます。
— 山原みさえ(HSP気質・こたつ在住の50代フリーランス)
好きなもの:あんこ/昼寝/漫画/ちいかわ